ヤブランは、その細く長い剣形の葉と、紫もしくは白色の花を咲かせる特長があります。
常に緑を保つこの多年生植物は、その強靭な生命力から庭づくりにも頻繁に活用されます。和風、洋風を問わず調和しやすい利点があり、ガーデニング好きには魅力的な植物でしょう。
一方で、ヤブランは育てるべきではないとする意見も存在しています。
さっそく結論から申し上げれば、ヤブランは育てても構わないのですが、地面に直接植える場合や、ペットを飼っている家庭の庭先では、いくつか注意しなければならない点があります。
この記事では、ヤブランの植栽における問題点と注意すべき事項について詳しくご説明します。
ヤブランの植栽に警鐘を鳴らすべき三つの理由
ヤブランの植え付けに慎重になるべきです。そのための3つの主な理由をご紹介します。
- 急激に増え広がり、結果として根が密集してしまうため
- ペットにとっての毒性があるため、その安全性に危険が及ぶ可能性があるから
- 鳥が実をついばむことによる問題
急激に増え広がり、結果として根が密集してしまうため
ヤブランを植える際の懸念点の一つは、その成長が旺盛であるため、やがて根詰まりを引き起こす恐れがあることです。
多年生の草本であるヤブランは、地面に植えると数年間手入れなしで育つという利点があります。しかし、その強い生命力は、根の拡がりが活発で、品質の良くない土地や不適切な場所でも容易に成長してしまうという側面を持ち合わせています。
育つ場所や土の種類にあまり敏感でない点は利点と言えますが、地面に植えた場合は留意する必要があります。成熟したヤブランの株は、その根が太く堅いため、抜いたり分けたりする作業が一層困難になるのです。
ペットにとっての毒性があるため、その安全性に危険が及ぶ可能性があるから
ヤブランを庭に植えることには注意が必要です。その理由の一つは、家庭内にいる犬や猫などのペットにとって有害だからです。
ヤブランにはサポニンと称される成分が含まれており、この物質をペットが過剰に摂取すると、消化器系の障害や下痢、嘔吐などの症状を起こす危険性が指摘されています。
ヤブランは元々ユリ科とされていたが、現在ではキジカクシ科リリオペ属に属している植物です。一般的にユリ科の植物は、ペットが誤って食べてしまうと危険とされています。
そのため、ペットのいるご家庭でヤブランを植える場合は、彼らが近づけないような場所を選ぶことが望ましいです。
なお、ヤブランの根は人間に対しては安全で、生薬としても利用されていますが、ペットの安全を考慮すると慎重な扱いが求められます。
鳥が実をついばむことによる問題
ヤブランの植栽を控えるべき三つ目の理由は、鳥類がその実を食べにやって来る点にあります。
ヤブランは、8月から10月にかけて鮮やかな紫色の花を開花させ、その後黒紫色の実を結実させます。これらの実は実際には種子で、食べられる部分はほとんどありませんが、ヒレンジャクやキレンジャクといった鳥がこれらをついばむことがあります。
しかしこの行為により、鳥が排泄する糞による被害が発生するリスクがあるのです。
ヤブランの植栽における配慮事項
ヤブランを庭に植える際には、いくつかのポイントに注意が必要です。主なことは以下の通りです。
- 根が詰まり過ぎないように定期的に株わけを行うこと
- ペットが触れないような場所に配置すること
- 花茎を早めにカットして種子の拡散を防ごう
根が詰まり過ぎないように定期的に株わけを行うこと
ヤブランは強い根を持ち、容易に根詰まりする性質があります。
特に鉢植えの場合、根詰まりによって植物の活力が落ちるため、早期に根詰まりの兆しを察知することが可能です。一方で、地植えの場合はその兆候を見逃しやすい傾向にあります。
成長が進み過ぎたヤブランは、根が密集してしまい、その結果、水分の吸収が困難になります。根が詰まることで、ヤブランの葉の色が悪くなり、見た目にも美しくなくなってしまいます。
ですから、根詰まりが進行して、株が抜きにくくなる前に、定期的に株分けを行い、植物のサイズを管理しましょう。
株分けを行う適切な時期は、春の3月から4月、もしくは秋の9月から10月です。この時期を目安に作業を行うことで、ヤブランを健康に保つことができます。
ペットが触れないような場所に配置すること
家にペットがいる場合、ヤブランという植物を植える際は、ペットがその植物を誤って摂取しないよう配慮することが大切です。
ヤブランは特に強い毒を持つ植物ではありませんが、ペットがなめたり噛んだりしないように手の届かない場所に設置するか、もしくは植えることを避けることで安全を担保することが推奨されます。
仮にペットがヤブランを口にしてしまった場合には、速やかに獣医師の診察を受けることが重要です。
花茎を早めにカットして種子の拡散を防ごう
ヤブランが自然に種を撒いて増えるのを阻止する最善の方法は、種が形成される前に花を取り除くことです。
ヤブランの実は実質的に種であり、食用部分はほぼ存在しません。黒く紫がかった外皮をむけば、中から白い種が露わになります。実が完全に成熟してしまうと摘むのは手遅れになることがあるため、注意が必要です。
鳥が実を食べた結果、種を別の場所に運んでしまったり、その糞に混ざって落ちることもあります。そうならないように、花が開いたら速やかに花茎を刈り取りましょう。これによって、鳥による食害を予防することも可能です。
まとめ
ヤブランは手がかかることもありますが、断じて育ててはならないわけではありません。
ペットを飼っているご家庭の場合は、ペットが誤って口にしないような場所に配慮して植えることが重要です。植え場所を適切に選べば、ヤブランの育成は難しくありません。
土の種類や追肥に余計な心配は不要で、病気や害虫の心配も少なく育てることができます。
夏の強い日差しや冬の厳しい寒さも問題なく耐えることができ、手間をかけずに放置しても大丈夫なヤブランを、ぜひ試してみてください。
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