「飛ぶ」と「跳ぶ」にはそれぞれ異なる意味があり、状況に応じて使い分けられます。空を飛行するような動作については「飛ぶ」を用い、空高く跳ぶようなアクションには「跳ぶ」を用います。例を挙げると、空を自由に飛び回る鳥や飛行機などは「飛び上がる」を用い、「飛ぶ」と表現します。逆に、カエルのように地面から勢いよく跳ねる場合は「跳び上がる」で「跳ぶ」と書きます。
バッタが飛ぶ場合にも、羽で空中を舞う行為を表す際は「バッタが飛ぶ」としますが、後ろ足で大きく跳躍する場合は「バッタが跳ぶ」と区別して表現します。「とび降りる」に関しては、空を飛びながら下へと移動するため、「飛び降りる」と記載しますが、「飛び下りる」とも表記されることがあります。ただし、高い場所から低い場所へ移動する意味合いで「降りる」を使用するのが一般的です。
「飛び跳ねる」についても文脈によって使い分けます。「泥水を踏んだ時のジャンプしない反応は「飛び跳ねる」、対して元気な子供のはねる行為は「跳びはねる」とします。「跳びはねる」の「はねる」を平仮名で表記する理由は、繰り返し出現する漢字が見栄えが悪いからです。
スポーツの世界では、「高とび」という競技が存在し、陸上競技では「棒高跳び」や「走り高跳び」のように、「跳ぶ」を使用します。一方で、逃げ去る意味合いでは「高飛び」が使われ、こちらは「飛ぶ」という文字が使われます。
また、「飛ぶ」は空中移動を伴わない場合でもいくつかの表現で使われます。例えば、「現場に飛ぶ」は急いで到着する様子、「デマが飛ぶ」はデマが広がること、「ボーナスが飛ぶ」はボーナスが消え去ること、「話が飛ぶ」は話題が飛躍することを意味します。
「翔ぶ」という漢字について
「とぶ」という動作を表す時、「飛ぶ」と「跳ぶ」以外に、「翔ぶ」という漢字が存在します。「翔ぶ」は、空を高く飛翔すること、もしくは広大な大空を自在に飛び回る様を表しています。この表現は、現実の飛行機や鳡ではなく、空想の生き物、例えば火の鳥のような存在が壮大に飛ぶ様子や、その自由な動きを描写する際に用いられます。
また、文学作品の中で、比喩表現としても取り入れられることがあります。しかし、漢字辞典においては、「翔」字の訓読みとしては「かける」とだけ記されており、「とぶ」は正式には含まれていません。それにもかかわらず、歴史的文献である平安末期に編纂された『類聚名義抄』では、「翔」という漢字に「とぶ」という読み方が記載されています。この点から、「翔ぶ」が単なる当て字であるわけではないことがわかります。
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