手作りと市販のベビーフードのどちらを選ぶかは、育児において保護者が直面する選択の一つです。手作りにこだわりつつも、次第に市販品に切り替えてしまう方や、仕事復帰に向けてレトルトに頼りたいという方も、栄養面での不安を抱えています。
忙しく働いている親や料理が不得意な人にとって、市販のベビーフードは重宝するものです。しかし赤ちゃんを市販のベビーフードだけで育てることには、発育上の影響を心配する声もあります。
さて、結論としては、市販のベビーフードのみでの育児も問題ありませんが、赤ちゃんの成長に伴って栄養バランスや発達に影響する可能性があるとされています。
今回の記事では、赤ちゃんの成長に及ぼす栄養面と体の発達への影響、ベビーフードのみでの育児を検討している際の進め方と注意すべきポイントを解説します。
ベビーフードを育児の中心に据えている方や、レトルト製品を離乳食として取り入れようと考えている方は、この記事を参考にして、理解を深めつつ効果的に利用していただければと思います。
体育成と栄養管理への影響
噛む力の発達不足と栄養素の偏り
赤ちゃんをベビーフードのみで育てることには盲点があり、噛む力が十分に養われず、また育児の進行とともに体の成長が必要とする栄養素が欠乏してしまうリスクがあります。
ここでは、市販のベビーフードを主食にすることで生じうる、主な2つの影響について解説します。
離乳食のせいで咀嚼力不足に
市販のレトルトや製品化された離乳食は便利ですが、柔らかすぎて咀嚼する必要が少なくなるため、赤ちゃんがきちんと噛むことを学べず、顎の発達に欠ける結果となることがあります。パッケージに適切な月齢が記載されていても、工業的な製法で加工される市販のベビーフードは、形が整っていても非常に柔らかいのが一般的です。
そこで推奨されるのは、市販の離乳食を利用する際、家庭で調理した適度な硬さの野菜などを加えて、赤ちゃんが実際に噛む経験を持てるようにすることです。咀嚼能力を養うためにも、このような配慮が重要になってきます。
赤ちゃんに欠けがちな4つの栄養素
赤ちゃんが不足しやすい栄養素には、鉄分、亜鉛、カルシウム、ビタミンDが挙げられます。市販のベビーフードは大量生産のプロセスを経ているため、微妙な栄養のバランスを取りづらく、これらの栄養素が不足しがちです。市販ベビーフードを取り入れる際には、これら不足しがちな栄養素を補完する食品を意識して赤ちゃんに提供することが重要となります。
理想的な離乳食アレンジのコツ
最適な利用方法として、市販のレトルト製品をベースにして、ちょっとした手間を加えたカスタマイズをすることが挙げられます。このアレンジにより、幼児の成長に必要な栄養バランスを整えることができます。たとえば、以下のように工夫をすることができます。
- 追加の野菜が必要な場合 → 市販の離乳食に茹でた野菜を混ぜ込む
- タンパク質の強化が求められる場合 → 既製のベビーフードに豆腐を組み合わせる
- 自宅で炊いたおかゆに、既製品のベビーフードを加える
- 肉や魚を自分で調理し、市販のレトルト離乳食はソース代わりに活用する
このように、小さいながらも工夫を凝らすことで、お子様にとって十分な栄養を供給する充実した離乳食となります。
ベビーフードによる離乳食の進行方法と留意事項
自宅で作る離乳食の場合、赤ちゃんの月齢に応じたレシピや食材の食感などを気にしながら進めます。しかし、市販のベビーフードを使用して離乳食を行う際は、徐々に食材のバラエティを増やしていく手順と、摂取栄養の均衡に注意しながら進めることが重要です。
離乳食を始めるうえでのアドバイス
離乳食を始める頃の5~6ヶ月の時期には、まず家で作った10倍がゆのヨーグルト状のものを食べさせてみましょう。また、市販されているベビーフードも赤ちゃんには柔らかく状態の食品を与えますが、特に離乳食の開始後2週間程度は、手作りのおかゆにしてみることが推奨されます。
市販のベビーフードに含まれるおかゆには時に、かつお節エキスをはじめとする「タンパク質」が含まれていることがあります。ただし、タンパク質を分解する消化酵素は離乳食を開始してから徐々に生成されるため、最初の4週間目あたりからは、豆腐などでタンパク質を取り入れ始めることができます。ただし、始めの2週間では消化に不安がある赤ちゃんもいるため、手作りのおかゆにすることが安全面を考えると安心です。
ベビーフードはパウチや小瓶に詰められたものも多くありますが、お湯で溶かして使える粉末タイプのものも利用しやすいです。赤ちゃんにとってはこれが初の「食事」となるわけですから、少しずつ慣れさせていくことが大切です。最初は1さじから始めて、様子を見ながら徐々に量を増やしていきます。
徐々に慣れてきたら、じゃがいもや人参のような野菜パウダーや、裏ごししたフリーズドライのほうれん草など、いろいろな食材に触れさせるようにしましょう。初期段階では食べる量が少ないので、少量ずつ使用できるタイプや小分けパッケージの商品が便利です。
中期(7~8ヶ月頃)の離乳食の進め方
赤ちゃんが離乳食に少しずつ慣れてきたこの時期では、摂れる食材の種類の拡大に注目しましょう。おかゆやうどんといった穀類に、魚や肉といったタンパク源を組み合わせるのが理想的です。この時期は鉄分が不足しやすくなるので、鉄分を含む食品を取り入れながら、全体の栄養バランスに注意して、赤ちゃんの成長を支える栄養を追加していきましょう。
後期(9~11ヶ月頃)の進め方
この頃になると、幼児は食べ物を自分の歯でちぎって食べることができるように成長します。中期段階から一歩進んで、幼児が食べられる食材の種類が増え、豊富な種類のレトルト離乳食を楽しむことができるようになります。また、この時期には、赤ん坊の身体が急激に成長するため、鉄分に加えて亜鉛やカルシウム、ビタミンDといった栄養素が不足しやすくなります。中でもカルシウムは骨格形成に必要不可欠な栄養素で、ビタミンDはカルシウムの体内吸収を助けます。魚を粉末にしたものがあると、カルシウムとビタミンDを効果的に摂取することができ、さまざまなレトルト離乳食にも簡単に追加することができて便利です。
さらに、この時期は、赤ちゃんが食べ物を丸のみすることが始まります。レトルト離乳食の中に含まれる具が柔らかすぎると丸のみの傾向があります。そのため、噛む必要がある大きな野菜を追加したり、硬めに茹でた野菜を組み合わせるなど、工夫してみるとよいでしょう。
◆1歳児から1歳半までの食事進行ガイド
子供が1歳を迎えると、離乳食が主なエネルギーと栄養源になっています。この頃には食べられる食品の量も多様性も増し、一般的なレトルト離乳食だけでは十分な栄養を摂取することが困難となります。そこで、複数のレトルト離乳食を組み合わせたり、手作りの離乳食を取り入れて量を調節しましょう。また、可能であれば手作り離乳食の割合を徐々に増やし、レトルト製品の使用頻度を段階的に減らすことが理想的です。
【開封後の取り扱いにご注意】使用済みは再利用を避けてください
一度手を開けたレトルト式の離乳食は、衛生的に適切でないため、赤ちゃんへの提供を控えるべきです。もしレトルト食品を開封後放置しておくと、そこには細菌が増える可能性があります。そのため、開封した際にはその都度完全に使用し、冷蔵保存せず、余った場合は廃棄することが最も安全です。製品に賞味期限が設定されていることがありますが、一旦開封してしまえば細菌が増殖するリスクも存在し、食中毒の危険を避けられません。そのため、無駄になるのが惜しいと感じても、保管は避けるべきです。
レトルト離乳食の注意点も知って上手に活用しよう
- 離乳食はベビーフードのみでも基本的には大丈夫
- ベビーフードだけでは、噛む力が育ちにくい、栄養素が不足しがちになる
- 市販のベビーフードを使ったアレンジ離乳食が理想
- 食材の種類を増やして栄養のバランスに注意して進める
ベビーフードは便利な商品ですが、その使用法を理解することで、離乳食の大きな支援となります。ただし、柔らかいものばかりを与えていると、赤ちゃんの口が専らミルクを摂取する形に留まり、固形食を噛むための口の発達が遅れることがあります。噛む力をしっかりと育てることは、離乳食の重要な目的の一つです。
大切なことは、赤ちゃんの成長段階に応じてレトルト離乳食に工夫を加え、バリエーションを増やして与えることです。さまざまな状況に応じて市販のベビーフードを賢く選択し、子育てに役立ててください。
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